あらためまして あんぽんたん

いまはかわいいものをかくブログです

好きになるほど気持ち悪いという地獄(とはいえ外はサンダー/チェリーズ考察)

「どこが海のみえるまち」の余韻を引きずりまくっているので、
うしろシティの去年の単独公演「とはいえ外はサンダー」をDVDで改めて見た。

渋谷を疾走するオープニングからしてクソかっこいい。
そのクソかっこ良さをぶっ飛ばすほどクソファンキーでクソサイコな(客席から悲鳴が上がるような)コントばかりなのだけど、
自分が一番好きなのは、

ガールズバンド・チェリーズを応援するヲタクたちのネタ!
(収録タイトルだと5番目の「ガールズバンド」)

好きすぎるのでこのネタを少しだけ考察したい。
「コントなんて分析考察とかせずにまっすぐ笑えや!」っていうのはごもっとも。しかし、このコントは爆笑する反面どうにもこうにも涙が出る。切なすぎて。
見る度、思い出す度に、胸がグギュウウウウとぞうきんみたいにしぼられてしまう……。

以下、ゴリゴリにネタバレします

《あらすじ》
 新進気鋭のガールズバンド・チェリーズの熱狂的ファンであるヨシザワ氏(K)バジマ氏(A)は、バンドを神のようにあがめ、にわかファンに手厳しい。いかにも古参ヲタク
 全国ツアーファイナルの興奮が冷めやらぬなか、ヨシザワはライブTシャツから私服に着替えて帰ろうとする。
 ライブTのままのバジマは大激怒。「ヨシザワ氏はライブTシャツの意味を分かってる!?」と、早口でまくしたてる。ライブへの熱量はライブTシャツであり、Tシャツを着ることで世間への周知になると主張するのだ。いわば布教活動。
 しかし、私服姿のヨシザワは、
「ライブTシャツを着て帰るのが本当にバンドのためになるのか?」
 と疑問をぶつける。
 バジマは「なるさ!」とまっすぐに答える。しかし、ヨシザワは涙ながらにこう訴えた。

 「我々は……気持ちが悪いでしょ?
 こういう人たちに人気のバンドなんだって思われないか!?」

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もぉーーー、あらすじ書いただけで涙出てくるよ(笑)

好きであることに誇りを持つ。それは本来素晴らしいことであるはず。
唯一無二の才能に惚れ込み、寝食や喜怒哀楽を共にし、ときに励まされ、かけがえのない宝物を見つけだしたことに感謝をし、同じ世を生きていることを嬉しく思う。

……なのに、そんな自分は気持ちが悪いヲタ。

「好きだ!好きだ!大好きだ!」と好きがつのればつのるほど、早口になり、顔は赤らみ、汗ばみ、身振り手振りが大きくなり、テンパり、すべてのことに全力すぎて周りが見えなくなり、その結果、激しく気持ちが悪くなる。

せめて見た目が爽やかで小綺麗であればどうにかなるのに、やっぱりどうしようもなくキモい。逃れようもない悲しい運命。

 

そしてヨシザワが言及する視点はもうひとつある。

「彼女たち(バンドメンバー)を女の子として見ている」という視点。
いわゆる「あわよくば彼女にしたい!付き合いたい!」という欲望。

問題なのは、チェリーズはアイドルではなくガールズバンドってこと。カッコイイ音楽をやっているのがたまたま可愛い女の子だった。それなのに恋愛対象として見ていいのか?
評価されるべきは見た目ではなく、音楽性であることをヨシザワやバジマはよぉおおおく分かっている。
だから「歌詞がいいよね。音楽性がいいよね」と褒める。
そう言いながらも、心のどこかでは「可愛い…付き合いたい!」という気持ちがある。ゴリゴリにある。
でもひた隠しにしている。

何故か!

日頃、そういう安易な目でバンドを好きになる“にわかファン”を彼らは嫌がり、否定しているから。その一部に自分を組み込ませるわけにはいかない。
だって「自分がこのバンドの一番の理解者でありたい」って願っているから。にわかと対極の立場にいたいから。バンドの一番そばにいたいから。理解するためには愛欲などという野蛮な感情は不要であるはず。

いわば、理性と欲望の葛藤。
抑えきれない爆発的な感情がある一方で、本当の気持ちを抑圧しまくっている。ゴリゴリに抑制している。
この矛盾しまくった感情と欲望を抱えた結果が“気持ち悪さ”なのかもしれない。もしかしたらね。

 

ネタのオチとして、バジマ氏はボーカルのアンナちゃんと付き合ってると告げる。
本編はそこで暗転してしまうので、それがウソなのか、本当(本気の恋愛)なのかは分からない。
この“気持ち悪いファン”と“ご本人”が付き合っているという事実は、ちょっとした救いのようであり、取り返しのつかないトドメのようでもある。
なにより、言葉を丁寧に選んで傷つけまいと説得してきたヨシザワ氏とカミングアウトしてしまったバジマ氏の友情はこれからどうなるんでしょうね……。だだこねて泣きじゃくるバジマ氏をうなずいて見守るヨシザワ氏は紳士だよ。やさしさそのもの!!

とにかく、このコントを見ていて思うのは「なにかを本気で好きになるのはどうしたって気持ちが悪い。好きで好きでしょうがないのに、気持ちが悪くて申し訳ない」っていう葛藤の切なさたるや!!
熱烈に好きになってしまったら最後、道を引き返すのは裏切りに等しい。
だからいいんだと開き直って突っ走ると、ますます気持ちが悪くなる。

地獄かな!!(笑)

 

ヨシザワ氏はこうも言う

「彼女たちは世間に見つかった状態だ。でも、我々が世間に見つかってはいけない!」

自分たちの気持ち悪さが、評価されるべき才能の迷惑になってはいけない……と考えてしまうことは、なんだかものすごく尊くてピュアである気がする。
ピュアなんだけど、あわよくば……と考えることはやっぱり不純(笑)

 

右に行ったら針の山!左に行っても八つ裂きの刑!みたいなこのネタ。
でもね、この胸の苦しさはなにかを好きになったことがある人なら経験したことあると思う。
かくいう自分も、好きなバンドのライブTシャツを着ているときは誇らしい気持ちだった。行きも帰りも無敵だった。ライブTを着ているときはすすんで良いことをした。自分が気持ちが悪いという自覚はなかった。まったく。
しかし、きっと、いや絶対気持ちが悪かった!
その痛い記憶がコントという笑いのかたちで叩きつけられたことにものすごくしびれる。
……って、こんなことを長々と書いている今の自分もなかなか気持ちが悪い。
自分って本当に気持ち悪い。ホント申し訳ない。
この気持ち悪さ、ここに全部置いておきます。

ヨシザワ氏の言葉を最後にもう一つ。

「これからもライブには行きたい。でも彼女たちに迷惑はかけられない。だから折衷案として、ライブに行くのは良し、でも帰りには脱ぐこと。」

ライブの帰り道にはこのコントのことを必ず思い出してしまいそうです。
このネタ、コントなのでものすごくデフォルメしてあるので差別的な要素もあるけど、そういうことを抜きにして、共感しながら(自分を俯瞰しながら)見てほしい。他にも皮肉や諸事情をふくめて考察しようと思えばまだいくらでもできるのですが、暗くなるのでやめます!!
ほんと地獄かな(笑)

 

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